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「資料、分かりやすかったよ」と言われて、口から出たのは「いえ、全然そんなことないです」。帰り道に、せっかくの言葉を自分で打ち返したことが、少しだけ引っかかる。褒められても嬉しくない、素直に受け取れないのは、謙虚だからとも性格が暗いからとも限りません。褒め言葉を受け取る「型」を持っていないことが、一因になっている場合があります。この記事では、言葉が入ってこない仕組みと、「ありがとう」の後に続ける一言から始める受け取り方の練習を紹介します。
褒め言葉が素直に入ってこない仕組み
褒め言葉は、自己評価と食い違うと弾かれやすくなります。
- 自己評価との差が大きい。自分では60点だと思っている仕事に「すごい」と言われると、「間違った情報が来た」と感じて、訂正したくなります。「いえいえ」は、その訂正です。
- 恥ずかしさで流す。注目が苦手な人は、場面を早く終わらせたくて否定します。
国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトは、ストレスを感じているときは問題点や良くないことばかりに注目しがちで、実際にできていること、うまくいっていることに注意を向けるのもよいとしています。褒め言葉は、他人が見つけてくれた「できていること」です。残しておくと、自分では見つけにくい材料になります。
「ありがとう」の後に続ける一言から練習する
いきなり「嬉しいです」と言う必要はありません。否定を一つ減らし、一言足すところから始めます。
否定で返してしまう人
変える前: 「いえ、たまたまです」。変えた後: 「ありがとうございます。前回の反省を一つ直してみました」。
ポイントは、否定しない・盛らない・事実を一言足す、の3つです。自分の努力を事実として添えると、受け取りながらうぬぼれにならない着地ができます。
相手の意図を疑ってしまう人
変える前: (本音は?と考えながら)「そうですか」。変えた後: 「ありがとうございます。どこが分かりやすかったですか」。
意図を審査する代わりに、中身を一つ聞き返します。相手が具体的に答えてくれたら、それはお世辞ではなく観察です。答えが曖昧でも、聞き返した自分の態度は変わりません。
恥ずかしくて流してしまう人
変える前: 「あはは、やめてください」。変えた後: 「ありがとうございます、ちょっと照れます」。
照れを隠すのではなく、照れたまま受け取ります。感情を言葉にしてしまうと、場面を早く終わらせる必要がなくなります。
やってはいけないこと・よくある誤解
- 受け取る練習を「自信をつけること」と混ぜる。先に変えるのは返事の一文だけです。
- 受け取れなかった日を責める。一覧に「否定した」と書けただけで、観察は進んでいます。
人の評価が気になって頭の中が静まらない日が多い方は、人にどう思われているか気になるときの心の守り方も参考にしてください。ミスのあとに自分を責める声が強いときは、自分を責める声をゆるめる3つの問いが役に立つかもしれません。
受け取った言葉を残す「ほめ貯金」
その場で受け取れても、夜には「でも本当は」が戻ってきます。言葉を手元に残す仕組みがあると、自己評価のほうを少しずつ更新できます。
- 褒められた言葉を、その日のうちに一行で書く。「資料が分かりやすいと言われた(部長)」
- 自分の反応も一語で添える。「否定した」「ありがとうと言えた」
- 週に一度、一覧を読む。自分の評価と、他人が見ている自分のズレを眺める
- 同じ内容が複数の人から来ていたら、それは好意ではなく事実として扱う
Lumieメンタルケアマガジン編集部では、この一覧を「1か月」と期間を決めて続けることを勧めています。最初の2週間は「否定した」ばかりでもかまいません。別々の人から同じ内容が書かれているのを見つけることが目的で、そこで初めて「そうなのかもしれない」と思える余地が生まれます。受け取り方の変化には個人差があります。
受け取る側の自分を知る
世界保健機関(WHO)は、信頼できる人と心配ごとや気持ちを分かち合うことをストレス対処として挙げています(WHO: Stress Q&A)。受け取れなかった褒め言葉のことを、信頼できる人に話してみるのも一つです。褒め言葉に限らず、好きなことも楽しめない状態が2週間以上続くなら、相談窓口や医療機関に相談してください。
評価を弾きやすい場面を知る入口として、心のタイプ診断を試してみてください(3分・無料・登録不要。医学的診断ではなくセルフチェックです)。なお、Lumieメンタルケアマガジンは、AI感情分析日記アプリ「Lumie」を提供するチームが運営するメディアです。ほめ貯金の置き場所として、Lumieに「言われた言葉と自分の反応」を一行で残す使い方もあります。手帳でも同じように機能します。
よくある質問
褒められて「ありがとう」と言うのは図々しくない?
図々しくはありません。相手は言葉を渡したくて渡しているので、受け取るほうが相手の意図に沿っています。否定しない・盛らない・一言足す、の形なら、うぬぼれには聞こえません。
褒められたとき、何と返すのが自然?
「ありがとうございます」に事実を一言足すのが基本形です。「前回の反省を一つ直しました」「嬉しいです、少し照れます」のように短く添えると、否定も誇張もせずに受け取れます。
お世辞かどうか見分けるには?
見分けようとするより、「どこが良かったですか」と中身を一つ聞き返すのが実用的です。具体的な答えが返れば観察に基づく言葉で、曖昧でも受け取った自分の態度は損なわれません。
まとめ
褒め言葉が入ってこないのは、自己評価との差と、受け取る型の不在から起きます。「ありがとう」の後に、事実を一言足す。意図を審査する代わりに中身を聞き返す。言われた言葉を一行で残して、週に一度読む。弾かずに手元に置いた言葉が、いつか自己評価の側を書き換えます。関連して、SNSでの比べ疲れは他人と比べて疲れるときの対処で扱っています。
つらさが続くときは、厚生労働省の相談窓口案内「まもろうよこころ」も参考にしてください。
※本記事は情報提供を目的とし、医学的な診断・治療に代わるものではありません。
基礎情報・相談先
以下は記事固有の出典ではなく、こころの健康について確認できる公的な基礎情報と相談窓口です。
つらいときの相談窓口
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
- よりそいホットライン(24時間) 0120-279-338
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスや診断、治療の代替となるものではありません。心身の不調が続く場合や深刻な悩みがある場合は、医師やカウンセラーなどの専門家にご相談ください。
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